2016年11月22日,福島県沖で発生した地震に伴う津波速報
東北大学 災害科学国際研究所 災害リスク研究部門 津波工学研究分野


Summary

O2016年11月22日05:59、福島県から37 km沖合でM7.4の地震が発生しました。この地震により, 最大1.4 mの津波が観測されました。この津波に関する速報を記載します。

津波数値解析と観測波形

津波数値計算 (速報値)

(1)断層モデルの設定

津波数値計算はNP1とNP2の2通りを実施しました.断層モデルのパラメータを表1に示します. 断層の位置は,本震と本震から1時間以内に発生した余震分布の中心が断層の中心となるように設定しました. 断層モデルの断層長さ,断層幅および平均すべり量は,Papazachos et al. (2004) の経験則を利用して算出しました. 地震のマグニチュードおよび震源の深さは研究機関によって異なった値が推定されています.例えば,気象庁(2016a)はマグニチュード7.4および深さ30km,USGS (2016/11/24) はマグニチュード6.9および深さ11.6km,および防災科学技術研究所(2016/11/24)はマグニチュード7.0および深さ11kmと発表しています. 津波工学研究室では,津波数値計算の速報として,マグニチュード7.4および断層深さ11.5kmを採用しました. 断層モデルの走向,傾斜角,すべり角はUSGS (2016a) のメカニズム解を採用しました.

表1.断層モデルのパラメータ

observation points

(2)計算方法

・空間格子間隔:405 m
・計算時間:地震発生から5時間
・計算コード:TUNAMI-N2(非線形長波理論,Imamura et al., 2006)

(3)計算結果

初期水位分布の計算結果を図1に示します.
水位の時間変化の計算結果を動画にして図2に示します.
最大水位分布の計算結果を図3に示します.
水位時間変化の計算結果を図4に示します.大船渡,仙台および小名浜の最大水位は,おおむね観測値と一致します.
ただし,計算では相馬に津波が実際より早く到達するため,断層の長さと幅を小さくする,または,断層の位置を陸から離すなどの修正が必要であると考えます.

Fig.1

    図1.初期水位分布の計算結果.(a) NP1.(b) NP2.
    図2.水位の時間変化の計算結果.(左)NP1.(右)NP2.

Fig.3

    図3.最大水位分布の計算結果.(a) NP1.(b) NP2.(a) NP1.(b) NP2.

waveform

    図4.水位時間変化の計算結果.(a) 下北.(b) 宮古.(c) 大船渡.(d) 鮎川.(e) 仙台.(f) 相馬.(g) 小名浜.観測値の代表点は気象庁(2016b)からの引用

参考文献

  1. 気象庁,2016a,気象庁報道資料,「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第78報) -平成28年11月22日05時59分頃の福島県沖の地震- ,http://www.jma.go.jp/jma/press/1611/22a/201611220800.html
  2. 気象庁,2016b,気象庁報道資料,「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第79報) -平成28年11月22日05時59分頃の福島県沖の地震- ,http://www.jma.go.jp/jma/press/1611/22b/kaisetsu201611221100.pdf
  3. 防災科学技術研究所,2016/11/24アクセス,http://www.hinet.bosai.go.jp/topics/off-fukushima161122/?LANG=ja&m=mecha
  4. Imamura et al., 2006, TSUNAMI MODELLING MANUAL (TUNAMI model), http://www.tsunami.civil.tohoku.ac.jp/hokusai3/J/projects/manual-ver-3.1.pdf
  5. Papazachos et al., 2004, G LOBAL RELATIONS BETWEEN SEISMIC FAULT PARAMETERS AND MOMENT MAGNITUDE OF EARTHQUAKES, http://geophysics.geo.auth.gr/new_web_site_2007/download_files/costas_CV/93.pdf
  6. USGS, 2016/11/24アクセス, http://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eventpage/us10007b88#moment-tensor

観測波形

潮位観測の結果(http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/TIDE/real_time_tide/sel/index_e.htm)を解析し、得られた東日本各地点での津波観測波形を示します。

observation points

今回の津波に対する社会対応

今回のイベントでの津波避難行動サマリ

今回のイベントでは,気象庁から津波警報・注意報が発令されたことや,強い揺れがきっかけとなって東北沿岸地域では住民による避難行動が行われた.結果として津波による深刻な被害は報告されなかったが,津波避難行動における車の利用について大きな課題を残した.

東日本大震災の避難行動においても車避難による渋滞が大きな社会問題となり,5年が経過した現在も各地域で議論が続いている1).東日本大震災以前では,我が国の津波避難における車の使用は,渋滞などにより円滑な避難行動を阻害するというのを主な理由として原則禁止とされてきた2).しかし,東日本大震災の実態として,平野が続き高台までの距離が遠い地形に住まわれる方や,自力での避難が難しい方は徒歩避難により安全を確保することが難しい状況があることが反省され,こうした地域の実情に応じて一部に車避難を容認する方針となった3).しかし,上記のような特別な条件を除き,依然として津波避難においては徒歩避難が原則であることに注意されたい.

だが実情は,車自体が高価な財産である,たくさんの荷物と共に移動が可能である,避難先でプライバシースペースとして利用できるといった理由で,必要以上の車避難が行われてしまう可能性がこれまで4),5),6)に指摘されてきており,各地域での津波避難における話し合いと合意形成が求められていた.今回のイベントでは,こうした活動が不十分なために,不適切な車避難が行われた結果,沿岸地域で渋滞が発生し,円滑な避難行動が出来なかった事例が見られた.渋滞の様子などはSNSに公開されているものもある*1.また,地震・津波の発生が早朝だったこともあり,避難のために発生した交通量に,通勤のための交通量が加わったことで,渋滞になったと思われる事例も一部で見られた.

今回の地震・津波の発生後は,SNSなどのメディアで車避難の是非について議論が始まっている.近年注目が集まっている津波避難シミュレーションはこの課題解決に貢献し得るものであり,IRIDeS津波工学研究室も,この開発に取り組んでいる6).津波避難シミュレーションとは,仮想の都市空間上で災害の発生以前に様々な避難状況を検討できるツールであり,こうしたツールの研究開発は,よりよい避難に必要不可欠な避難の議論に具体的な数値情報を提供することで,避難のルール作り,合意形成に貢献できる.しかし依然として,こうしたよりよい避難を実現するための研究開発と共に,地域での当事者の話し合いが非常に重要である.東日本大震災と今回のイベントの避難行動の反省をしっかり行い,次の避難行動に教訓を生かすことがやはり重要である

*1 例えばTwitterで「避難 渋滞」と検索すると,当時の避難の写真等が参照可能

参考文献

  1. Suppasri, A., Latcharote, P., Bricker, J. D., Leelawat, N., Hayashi, A., Yamashita, K., Makinoshima, F., Roeber, V. & Imamura, F. (2016). Improvement of tsunami countermeasures based on lessons from the 2011 great east japan earthquake and tsunami -Situation after five years-, Coastal Engineering Journal, 58(4). doi: 10.1142/S0578563416400118
  2. 地域防災計画における津波対策強化の手引き(H10. 3)http://tsunami-dl.jp/document/022
  3. 交通の方法に関する教則(H24. 3)https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/kyousoku/index.htm
  4. Sun, Y., Nakai, F., Yamori, K., & Hatayama, M. (2016). Tsunami evacuation behavior of coastal residents in Kochi Prefecture during the 2014 Iyonada Earthquake, Natural Hazards. doi: 10.1007/s11069-016-2562-z
  5. 今村文彦(2014)津波の避難行動と減災対策〜東日本大震災の教訓を踏まえて〜、緊急時、災害時の人間行動と欧州文化相互影響調査(シルク・シュミット、エド・ガリア編)*Book abvailable in Japanese
  6. Makinoshima, F., Imamura, F., & Yoshi Abe: Behavior from Tsunami Recorded in Multimedia Sources at Kesennuma City in the 2011 Tohoku Tsunami and Its Simulation by Using Evacuation Model with Pedestrian-Car Interaction. Coastal Engineering Journal. doi: 10.1142/S0578563416400234

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by:

F. Imamura, A. Suppasri, N. Leelawat, P. Latcharote, A. Hisamatsu, F. Makinoshima, M. Watanabe, H. Ohira, Y. Hirakawa, N. Togawa, N. Hasegawa, T. Otake, R. Baba, K. Fukui

(Tsunami Engineering, Hazard and Risk Evaluation Research Division)

S. Sato

(Disaster Digital Archive, Disaster Information Management and Public Collaboration Division)

K. Yamashita, A. Hayashi, Y. Abe

(Earthquake induced Tsunami Risk Evaluation (Tokio Marine), Endowed Research Division)