津波について

0.定義4.津波の遡上(陸域での特徴)
1.発生原因5.津波による被害
2.津波の種類6.被害の経験と対策
3.津波の伝播の特徴(海域での特徴)7.リンクの整理

0.定義

つなみ 津波(津浪・海嘯)】地震、海底変動などによって生じる波長の長い波。海岸に近づくと急に波高を増し、土手のようになって押し寄せる。(小学館現代国語例解辞典(第二版)より)
 「津波」の「津」とは、「津々浦々」というように、語源をただすと「舟つき場」「渡舟場」、つまり港という意味である。
 津波は、その「津」に押し寄せる異常な波ということから、言い伝えられたともいわれる。沖にいたときには気づかなかったのに、津(港)に帰ってみると、大波が押し寄せていて、海辺の里も人々も流され、あとかたもなかった――そういう異常な波。科学的には、海底の地殻変動によって発生する、たいへん波長の長い、しかも破壊力の大きい異常な波ということになる。
 いわゆる「高潮」も、以前にはよく津波と呼んだが、現在は気象庁の警報などでも、「高潮」と「津波」を区別している。前者は低気圧の接近などによって波が高くなることである。「高潮」は「風津波」と呼ばれることもある。
 なお、古い文書や新聞などをみると、津波のことを「海嘯(かいしょう)」と書いている。これは昔、文字とともに中国から入ってきた言葉で、大きな川の河口などで満潮時に海水が逆流し、水面さざめく様子を表現した言葉である。本来、これは津波とは別の意味であり、現象そのものも特に危険性があるものではない。従って今はこの文字を使わず、小説などで使う場合でも、これに振り仮名をして、「海嘯(つなみ)」と読ませている。
石垣島地方気象台ウェブページより

1.発生原因

(1)地震によるもの

津波の発生原因  海底地震に伴う地殻変動で、震源に近い海底がほとんど瞬間的に隆起と沈降を繰り返す場合がある。すると、これをトレースする形で海の水が海底から大きく動いて盛り上がったり、へこんだりする。こうして波が四方にひろがり、津波が発生する。海底の変動のパターンにより、沈降域に面した海岸では引き波、隆起域の所は押し波で始まる。プレートの境界や海底の活断層が数多く存在する日本近海では海底の地殻変動が活発に発生し、頻繁に津波が生じている。
 津波の規模は、震源の深さが80kmより浅いときはその深さによらず、地震の波動との間に良い関係を示す。しかし、例外的に地震波動が比較的小さい地震が大きな津波を起こす場合がある。この地震を津波地震と呼ぶ。明治三陸津波(1986年6月15日、三陸沖のM=7.6の地震により起こされた津波。現在の三陸町綾里で38.2mの遡上高を記録。)がその典型的な例である。津波地震では、断層の立ち上がり時間が長く、津波は効果的に起きるが、相対的に地震波動として放出されるエネルギーが小さいことによる。ぬるぬる地震とも呼ばれる。津波地震にについては津波の予測がつきにくく、現在でも研究が進められている段階である。

(2)地震以外の原因によるもの

 津波には、陸上の火山が爆発し、それによる地すべりで大量の土砂が海に突入することによって発生する種類のものもある。「島原大変肥後迷惑」という言葉で有名な寛政4年(1792)の島原湾の大津波が代表的な例である。島原半島での火山の噴火によって、雲仙岳眉山(天狗山)の東部が崩壊し、この大量の土砂がが島原湾に突入し、有明海を経て対岸の肥後国沿岸を津波が襲ったもので、1万5000人あまりが死亡した。また、海底の大噴火が、津波を発生させる場合もある。

2.津波の種類

(1)遠地津波

 原因となる地震が発生してから1時間以上たって襲来する津波のこと。その地点で地震波動を感じないような遠方の地震による津波のことをさす。1960年5月24日に日本を襲ったチリ地震津波がその代表例。

(2)近地津波

 原因となる地震が発生してから1時間以内に襲来する津波のこと。震源が近いほど、短時間のうちに津波が押し寄せる。

3.津波の伝播の特徴(海域での特徴)

(1)津波は1波、2波、3波と繰り返し襲ってくる。

 津波の第1波より第2波以降の方が大きくなることもあること、繰り返し波が押し寄せてくる可能性があること(波状段波)を考えれば、少なくとも12時間以上は警戒が必要である。

(2)津波の速さ

 津波の速さは水深によって変化し、一般に、次の式で求められる。
 津波の速さを求める式
 つまり、海の水深が浅くなればなるほど、津波の速さは遅くなることになる。この式に基づけば、昭和35年(1980)のチリ地震津波の場合、平均水深4,000mの太平洋上での津波の進行速度は約720km/hとなり、新幹線の約3倍の速さとなる。この津波は17,000キロメートル余の距離をわずか22時間半で走り、日本沿岸に達した。同様にして計算すれば、水深2,000mでは約500km/h、200mでは約160km/h、10mでは約36km/hとなる。
 陸上に遡上した津波は人が全速力で走るほどの速さとなる。

(3)津波の波長

 津波の波長は約10km〜100km程度となり、非常に長い。そのため沖合いではほとんど津波を感じることはない。

(4)津波の周期

 湾の形と大きさできまる波の定常振動の周期と、その津波の周期が合致した場合、津波による被害が拡大することがある。「(6)津波の共振」の項を参照。

(5)津波の高さの変化

 津波の高さを示す「波高」は、平均水位よりどの程度波が高くなったか、という数字である。沖合いでは2〜3m程度の波高のため気付かれないことが多いが、水深が浅くなると前の波に後ろからの波が追いつき折り重なる形となり、急激に高くなる。遠浅の海岸では段波状になることもある。主に近地津波の場合はV字型をした湾で津波の高さが急激に高まると言われているが、そうではない例もある。また、遠地津波の場合は袋状の湾で高い波高を記録している。
 津波が高くなる様子V字型湾の様子
 湾の形を大きく分類し、袋型、直線海岸、U字型、 V字型の4つに分けると、一般に、この順序で次第に湾奥での津波の波高が高くなる傾向にある。
 湾の形の分類
 V字型の湾の例としては岩手県の綾里湾、合足湾などが挙げられる。近地津波であった明治・昭和の三陸地震津波によって20m以上の波高を記録し、ほぼ全滅に近い被害を受けた。しかし遠地津波であったチリ地震津波の際は被害が無かったのである。
 袋状の湾の例としては岩手県の大船渡湾が挙げられる。「く」の字形に深く入り組んでいる袋状の大船渡湾でも、湾口に近い部分では、旧末崎村の船川原、細浦、旧赤崎村の蛸ノ浦など三陸津波の際には被害が大きかった。が、湾奥の大船渡町(現市)そのものは、三陸津波では被害が比較的に軽微であった。ところが、チリ津波ではその湾奥に入るほど被害が大きく、海岸から2,000mの奥地にまで波が侵入して、全国最大の被害を記録した。
 大まかに分けて上のような分類があるとは言え、波高は地形の影響を大きく受けるため、一概に限定することはできない。例えば岩手県の田老湾は、入口部分の水深が深く、周囲が絶壁であるため津波が起こった場合、湾口で回し波の現象が起こって岬の内側に大きな被害をもたらした、とされている。
 そしてさらに、波高は湾の形だけでなく、津波を発生させた震源の広さ・深さ、地殻変動の具合、津波の波長など、その津波の性質とも関連している。
 また、陸棚上で発生した津波の外洋へのエネルギーは、主として海岸線に垂直に放射される。チリの海岸線に垂直な線がわが国の海岸に直交していることが、チリ沖で発生した津波がわが国にも被害を与えた一因である。
宮城県本吉郡志津川町にて。チリ地震津波の水位記録

(6)津波の共振

 湾の一端が外海と通じ、自由に海水が出入りできる湾では、湾の形や大きさ、深さでそれぞれの湾によって異なるが、一定の周期を持った海面水位の振動があり、この一定の周期をその湾の固有周期(セイシュ)と呼ぶ。もし津波の来襲周期(第1波と2波目の時間間隔)とこの湾の固有周期が一致すると、湾内の海水は共振現象を起こして、2波目以降の津波は外海の津波波高の数倍にも増幅されるようになる。

4.津波の遡上(陸域での特徴)

(1)陸上への遡上

 平坦部では、約1km浸水するごとに1m程度津波の高さが減少する。切り立った地形では沿岸での津波の高さまで浸水する。地形によっては、より高い所まで津波が這い上がる場合もある他、峠を越えた波が山奥の思わぬ箇所を襲うケースもある。

(2)河川への遡上

 陸上より早く遡上するため、内陸の思わぬところから浸水する場合がある。下水管を伝わって、内陸に浸水した例もある。津波が河川を遡上する現象をボアと呼ぶ。

5.津波による被害

(1)人命

 津波に対する研究や対策が十分になされていなかった時代には多くの人命が失われた。1771年に八重山群島を襲った津波では11,741人が死亡、1792年の島原湾での津波では15,030人が死亡、1896年の「明治三陸地震津波」では岩手・宮城・青森の3県で約22,000人が死亡、1933年の「昭和三陸地震津波」では3,008人が死亡した。小さな漁村などでは住民の大半が死亡し、人口回復に長い年月を要した、という記録も数多く残っている。
 時代を経るに連れ津波の研究や防災対策が進んできたことにより人的被害は少なくなってきている。それでも、1960年のチリ地震津波では死者・行方不明者139名、1983年の日本海中部地震では津波による死者100人、1993年北海道南西沖人では死者・行方不明者229名を数えるなど、数多くの尊い人命が犠牲になっている。
 死因として挙げられるのは溺死が最も多い。その他、倒壊した家屋の下敷きになったり、漂流物による外傷で死亡するケースもある。

(2)家屋

 木造家屋は浸水高2m程度でほぼ全壊、1m程度で半壊となる。最近の家屋では1階部分が破壊されても柱を残して2階は無傷、という例も見られる。鉄筋や鉄骨で建造された建築物は大部分が残る。押し寄せる波に加えて、引いていく波の破壊力も凄まじい。
北海道南西沖地震・津波による被害の様子 北海道南西沖地震・津波による被害の様子

(3)インフラ

 津波だけによる被災の場合でも、橋脚の流失や家屋の倒壊などによる道路・線路の封鎖、電線・電話線の切断、備蓄燃料の流失などが想定される。津波被害の多くは地震を伴うため、地震による被害も大きい。水道・ガス・電気・電話など、いわゆるライフラインが壊滅状態となる。北海道南西沖地震の際にはこれに加えて離島の被災という悪条件が重なり、復旧作業はおろか情報収集すらままならない状況となった。

(4)漁業関係

 湾内に押し寄せた津波は、海苔、ワカメ、牡蠣、ウニ、アワビ、ホタテなどの養殖漁業に壊滅的な被害をもたらす場合が多い。また、漁船が陸にうちあげられたり、岸壁にぶつかって損傷するなどして航行不能になったり、流失したりするため、漁業の被害は深刻になる。

(5)農業関係

 内陸まで津波が押し寄せると田畑が浸水し、作物に被害を及ぼす。明治・昭和の三陸地震津波の際には農耕用の牛馬が死亡したため農業にもかなりの被害が及んだ。現代でも、農業用機械が浸水・破壊される可能性がある。
参考HPより。チリ地震津波の際の被災状況

(6)2次的被害

 倒壊した家屋や陸上にうちあげられた船舶などから燃料が流出し、火災が発生する場合がある。また、付近の海域にあらゆるものが流出すると、周辺海域の水質汚染は免れない。

首藤伸夫「津波強度による津波形態と被害程度の分類」
津波波高(m)  1          2           4           8        16        32
津波形態
緩斜面

急斜面


岸で盛上がる

速い潮汐
沖でも水の壁
第二波砕波

速い潮汐


先端の砕波が増える


第一波巻き波砕波
木造家屋部分破壊全面破壊
石造家屋持ちこたえる 全面破壊
鉄・コン・ビル持ちこたえる 全面破壊
漁船 被害発生被害率50%被害率100%
防潮林被害軽減 漂流物阻止
津波被害軽減
部分的被害
漂流物阻止
全面的被害
無効果
養殖筏被害発生
沿岸集落 被害発生被害率50%被害率100%

6.被害の経験と対策

(1)人命

 どのような地震でどのような津波が来るのか、ということを一概に予想・判断することは難しいが、海岸付近で強い地震を感じたときや、ゆっくりとした揺れを長く感じたら即座に高台に避難すべき、とされている。日頃から避難場所や避難経路を確認しておき、万一の際はとにかく逃げることだけを優先できるようにしておくべきである。三陸海岸での言い伝えには、津波の際に金や物に執着することを戒めるものがいくつもある。自治体による定期的な訓練も重要である。
 気象庁が発令する津波予報は、「津波注意報」の場合「高いところで0.5メートル程度の津波が予想されますので、注意してください。」というもの、「津波警報」の場合は「高いところで2メートル程度の津波が予想されますので、警戒してください。」というもの、大津波警報の場合は「高いところで3メートル程度の津波が予想されますので、厳重に警戒してください。」という内容になる。
 また、いくつかの研究機関による津波観測も行われ、津波の早期発見・早期警報発令を目指している。また、沿岸自治体では独自の監視システムや防災無線を設置している箇所が数多くある。
宮城県本吉郡志津川町にて。

(2)家屋

 津波の持つ破壊力は凄まじいものであるため、絶対的な対策は難しい。防波堤・防潮堤の建設や、建築物の鉄筋化、集落の集団高所移転、公共施設の高所化などの対策がとられている。河川への津波の遡上を防止するための水門が設置してある箇所もある。
北海道奥尻島に設置された水門
宮城県本吉郡志津川町にて。宮城県気仙沼市にて。

(3)インフラ

 道路をはじめとしたインフラ施設の被災も免れない。大きな地震による津波の場合はさらに被害が大きいことが予想される。万一の場合に備えた各家庭における飲料・食料・物資の備蓄や避難経路の確認が重要となる。関係機関も被災に備えた計画を整備・確認しなければならない。
 共同溝などによって電線などインフラ施設を地下に埋設することも対策の一つとして挙げられよう。ただ、大きな地震を伴った津波の場合はどの程度役立つか未知数である。

(4)漁業関係

 津波が予想される場合、船舶は一刻も早く港外に避難しなければならない。引き波から始まる津波の場合は水深が浅くなって退避できなくなる場合もあるため、一刻一秒を争う必要がある。

(5)農業関係

 津波だけでなく、潮風・高潮の被害軽減のために防潮林の設置が考えられる。黒松・イヌマキなどの抵抗力の強いものを海岸付近に植える。

(6)2次的被害

 北海道南西部沖地震・津波の際、大量の燃料備蓄施設が倒壊することで火災が引き起こされる可能性がある、という指摘がなされた。津波被害が予想される地域では、燃料の備蓄場所の選定にも細心の注意が払われなくてはならない。

7.リンクの整理

●地震調査研究推進本部
  http://www.jishin.go.jp/main/index.html
●東北大学大学院工学研究科付属災害制御研究センター(津波工学研究室)
  http://www.tsunami.civil.tohoku.ac.jp/
●創造工学研修・津波の伝播数値モデルによる解析と可視化 志津川河口の調査
  http://www.tsunami.civil.tohoku.ac.jp/hokusai2/topics/TU-UW/2001/shizu/shizu.html
●WISDOM96岩手県田老町から津波被害と対策
  http://www.edu.ipa.go.jp/mirrors/rika/WISDOM96/tunami/tunami.HTML
●山田町の津波
  http://www.echna.ne.jp/~yamada/text/sub05/index.html
●国土交通省 東北地方整備局 八戸港湾空港工事事務所
  http://www.pa.thr.mlit.go.jp/hachinohe/nami/nami4.html
●さんりくこども博物館
  http://www.thr.mlit.go.jp/sanriku/children/index.htm
●「昔は、大変だった地震と津波」
  http://www.d1.dion.ne.jp/~yamataro/map/chiemi/tunami.htm
●Pulsar Soft
  http://www.pulsarsoft.co.jp/tg.html
●青森県防災部
  http://www.bousai.pref.aomori.jp/jisinsouran/sanriku/3_sonota_target.htm
●仙台市消防局
  http://www.city.sendai.jp/syoubou/kanri/index.html
●Chikara YAMASHITA's HomePage
  http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/chikara/index.html
●東京大学地震研究所要覧
  http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/intro/pub/yoran/index-j.html
●北海道南西沖地震報告
  http://www.hiyama.or.jp/earthqu.htm
●徳島県海部郡海南町立浅川小学校
  http://www.nmt.ne.jp/~asakawae/
●東海・東南海・南海地震津波研究会
  http://www.hydro-soft.com/~tsunami/index.shtml
●石垣島地方気象台ウェブページ
  http://www.okinawa-jma.go.jp/ishigaki/home.htm
●静岡県防災局のホームページ
 http://www.pref.shizuoka.jp/bousai/index.html
●地震予知情報センター
 http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/index-ja.html