東北大学 大学院工学研究科 附属災害制御研究センター
地域防災ゼミ 話題提供要旨 2005/07/12

リスク・コミュニケーションとしての災害物語



仁平 義明(にへいよしあき)(東北大学大学院文学研究室心理学講座)
nihei@sal.tohoku.ac.jp


■話題の概要

 災害について語られた個人や公による物語(災害ナラティブ)を分析する 視点、とくに、 それをリスク・コミュニケーションとして考えたときの視点 について述べる。災害物語の 聞き手に形成される「災害物語スキーマ」は、 「災害に関係するリスク諸変数とそのとり うる値の範囲についての構造化さ れた知識」として表現することもできる。災害物語は、 リスク・コミュニケ ーションとして、次のような働きを持つものであることが望ましいと いえ る:
◇起こりうる事態の幅と危険率について情報を与える。
◇組織・個人の 準備性を 高め、間接経験を与えることで現実の事態での混乱を少なくする。
◇事態への対処の仕方 と他者への援助について知識を与える。
◇事後の必要 な情報収集と支援の求め方について 知識を与えることで、災害リズィリエン シーを高める。
◇支援エージェントへの信頼を形 成し、アウトリーチ・プロ グラムの受容をはかる。
また、聞き手に災害物語スキーマを形成しようとするとき、可能ならば、 スキーマを構 成する各変数はデフォルト値(「津波物語スキーマ」であれ ば、地震は大きく、波が引い ていくときに津波が起こる、携行品はなしで避 難場所は高所、など)だけから構成される のではなく、さまざまにとりうる 値の範囲についての知識を含むものであることが望まし い。 「災害ナラティブは、リスクを重視する方向で使用し、安全の根拠として 使用しない」、 ということが原則であるといえる。 さらに、事態を異常であると判断する「異常事態の検知」を阻む「検知抵 抗要因」につ いても、ふれる。